2025年ニュージーランド林業視察研修報告 ~視察2日目 ロトルア編その1~

イベント・取り組みトピックス

2025年11月、海外の林業の取組から学び、今後の事業運営に活かすことを目的として、組合企画による初の海外林業視察研修を実施しました。

ロトルアは、広大な人工林と研究機関を背景に、森林資源の育成から利用までを体系的に展開する、ニュージーランド林業を代表する地域です。

11月11日(火)視察先③ FOREST GROWERS RESEARCH(FGR)

FGR社は、ニュージーランドの林業界が出資して設立した研究開発機関で、産業界と政府が共同で進める研究開発を担っています。
今回は、2019年に開始された9年間(~2027年)の近代林業の自動化・ロボット化を目指した大規模研究プログラム「フォレストリー・ワーク・イン・ザ・モダン・エイジ」について主にご紹介いただきました。
総予算は約2,220万NZドルで、主な財源は、伐採木材1トンあたり33セントの「森林所有者レヴィ(賦課金)」と、林業企業からの拠出または研究に必要な機械や人員の提供などによる支援により構成されており、産業界が約6割、政府(一次産業省:MPI)が約4割を負担しているとのこと。
目的である(1)労働力不足の解消、(2)生産性向上、(3)労働安全の確保、(4)環境負荷の低減、(5)開発技術の商業化の5点における取組について伐採・物流プログラムマネージャーのレイモンド氏からご説明いただきました。

数々の先進的な取組を紹介するレイモンド氏。胸が躍るような驚きの発想・技術ばかり!


【 紹介された主な技術開発 】

  • 遠隔操作型フェリングウェッジ: 手作業伐倒の危険工程を減らす安全対策
  • 自動クイックカプラー: アタッチメント交換(フェラーヘッド、グラップル、バケット等)を人が近づくことなく自動化し作業効率を向上
  • ケーブルヤーダの半自動化(ATL社 ※後述): 集材作業の操作負担軽減と安全性向上
  • バーク残存量の自動計測: デバーカー処理後のバーク残りを自動チェックし品質管理を目視でなくコンピュータにより計測し最適化
  • 自動丸太IDシステム: ペイントや紙タグを使わず、丸太のトレーサビリティを確保する新方式
  • 丸太の「反り・曲がり」自動測定: 機械をプロセッサに搭載し、作業者の目視判断を機械化
  • 林地残材回収の効率化: 風倒木や折損木の多い現場で、専用グラップルにより残材回収(スラッシュ回収)を改善
  • 自動チェーン掛け(荷締め)システム: チェーンを自動で掛け、張力を自動で調整・監視するシステムにより、運転手の危険作業を削減する自動化技術

これらの技術により、将来的に商用化し、林業現場の安全確保・コスト低減・作業効率向上に寄与することを目指しているとのことです。

今回の視察訪問についてFGR社のホームページにてご紹介いただいております。

FGR社のホームページに紹介されました!

11月11日(火)視察先④ APPLIED TELEOPERATION LTD(ATL)

ATL社(Applied Teleoperation Limited)は、2017年に設立された、先出のFGR社と共同開発を進める林業向けの遠隔操作技術とビジョンシステム(映像技術)に特化した遠隔操作・映像技術のスタートアップ企業です。
FGR社の前身であるFFR社の伐採安全プログラムを起点に誕生し、現在もFGR社と密接に協力しながら、急傾斜地での安全性向上・省力化・自動化を目指した技術開発を進めています。3名の設立メンバーのうちミリケン氏からお話を伺いました。

ミリケン氏。集材機のフル・テレオペレーションや視認性向上システムなど、
林業の安全性と効率化を支える夢のような技術、それが現実に!
  1. ATL社のビジョン
    ▶ 遠隔操作(Teleoperation)
    ▶ 高画質カメラによる映像支援(Vision Assistance)
    この2つを組み合わせ、「より安全で、より生産性の高い林業現場を実現すること」を企業理念とし、特に、伐採作業のうち「危険度が高い急傾斜地での作業」を、機械の遠隔操作によって人から切り離すことを最重要課題として取り組んでいるそうです。
  2. 主な製品・技術
    ▶ 完全遠隔操作システム(Teleoperation System)
    ・オペレータは機械に乗らず、別地点に設置した操作席(コンソール)から操縦
    ・ジョイスティック・ペダル・複数モニターを備え、通常の重機と同等の操作性を確保
    ・フェラーバンチャやアンカーマシン(ウインチ補助)の完全無人化を実現
    ▶ Cutover Cam(伐採地俯瞰カメラ)
    ・現場の高所や伐採地の見通しの良い場所に設置
    ・オペレータにリアルタイム映像を送信し、死角を大幅に減らす
  3. APEX社※との共同開発製品
    APEX社と共同で現在次のような製品を開発しています。
    ▶ 電動グラップルキャリッジ
    ・従来のディーゼル内蔵式ではなく、完全電動で駆動
    ・急傾斜でも安定して作動し、整備も容易
    ▶ グラップルカメラ
    ・グラップル上部に取り付ける簡易カメラ
    ・オペレータが上からの映像で丸太の位置を把握でき、作業精度が向上
    ▶ Shovel Yarder(ショベルヤーダ)
    ・油圧ショベルベースのツードラム・ヤーダ
    ・電動キャリッジやカメラと組み合わせて、安全な集材を支援
    ※APEX社は、林業向け機械の設計・製造を行う企業で、急傾斜地の伐採や集材など「危険性・困難性」の高い林業を安全かつ効率的に行うための“スマート機械”を開発している。
  4. 遠隔操作キャビン(トレーラー内コックピット)
    特徴的な取り組みとして、現場近くに専用トレーラーを設置し、その内部に遠隔操作席を作る方式があります。
    ・大型モニター、ジョイスティック、ペダル、操作盤を備え、通常の機械操作とほぼ同じ感覚で作業が可能
    ・伐採用ヘッドを装着したベースマシンを、オペレータが一切乗らずに遠隔操作
    ・ニュージーランドの実際の現場で稼働中
  5. 体感型シミュレーターの開発
    現在、振動や傾斜を再現する「体感型プラットフォーム」を開発中。
    ・ゲーミングチェアのような装置で、傾斜・地面の変化・滑りなどをリアルに再現
    ・遠隔操作は「機体の揺れが感じられない」ことが課題だったが、この装置により、傾きや荷重変化を身体感覚で掴めるようになる。
  6. 2026年末までの目標:急傾斜地の手作業伐採ゼロ
    ATL社および協力企業は、2026年末までに、急傾斜地でのチェーンソー伐採を完全に廃止するという大きな目標を掲げています。
    ・急傾斜(60度まで)で稼働可能な、遠隔操作フェラーバンチャを開発中
    ・ウインチアシスト(テザー)と組み合わせ、どんな傾斜でも人が入らない伐採体制を構築する計画
    この取組は、ニュージーランドの林業業界が進める「Zero Harm(ゼロ・ハーム 死亡・重傷事故ゼロ)」に直結しており、世界的にも先進的な挑戦といえます。
ATL社の主力製品「CutoverCam」
高精細・低遅延の映像によりケーブル集材作業時の視認性と安全性の向上を実現

ATL社は、「人を危険から遠ざける林業」を最終的な理念として、遠隔操作・電動化・映像技術・シミュレータなど多分野の技術を統合しながら、FGR社および外部パートナーとともに急傾斜地林業の革新を推進しています。

2026年1月6日

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