2025年11月、海外の林業の取り組みから学び、今後の事業運営に活かすことを目的として、組合企画による初の海外林業視察研修を実施しました。
視察先はニュージーランド。大規模な植林事業と機械化や安全対策等において先進的な林業経営が行われており、また、ラジアータ・パインを中心とした大規模な森林経営と加工の一貫体制は、国内林業との比較において多くの学びが得られると考えました。
視察メンバーは、現地視察先との交渉・調整をお引き受けいただいた(一社)日本木質バイオマスエネルギー協会会長・東京大学名誉教授の酒井秀夫氏はじめ、組合員及び賛助会員12名、組合からは、営業企画部部長小野寺並びに営業企画部松島及び経営管理課課長立花の総勢16名でニュージーランドを訪問しました。
行程
今回の研修は、ニュージーランド北島のみを巡る行程としました。
成田空港からオークランド空港に到着後、現地在住の林業専門コンサルタントで通訳としてご同行いただいた松木法生氏※と合流し、国内線でネイピアへ移動し現地視察、バスでロトルア方面へ移動して各視察先を訪問し、国内線で再びオークランドへ戻りました。最終日はバスでワイポウア・フォレストを訪れ、北島の主要な林業関連地域を効率的に巡ってきました。
※松木氏略歴
ニュージーランド在歴約30年、ニュージーランドやフィンランドなど海外企業勤務を経て独立、林業・木材産業の専門コンサルタント。国際市場での事業戦略立案や市場開拓、調査分析を手がける。Pino & Co 代表として、日本~NZ間を中心に多様なプロジェクトと情報発信に携わる。
ニュージーランド
ニュージーランドは南太平洋の島国で、北島と南島の二島から成り、温暖な気候と多様な自然環境に恵まれています。英国文化の影響と先住民マオリの伝統が融合し、独自の文化を形成しています。政治・経済は安定し、環境保全意識も高い国です。地形は森林資源にも大きく影響し、北島は火山灰土壌が広がり、ラジアータ・パインなど成長の早い人工林の造成に適しています。南島はサザンアルプスを中心に気候・土壌条件が多様で、地域により異なる森林環境が見られます。沿岸部の平野は植林や素材生産に適しており、地形特性に応じた森林管理が行われています。
ニュージーランドの林業
ニュージーランドの林業は、同国の主要産業として長年発展してきました。特にラジアータ・パインを中心とした大規模な人工林は世界でも有数で、植林から伐採・輸送まで一貫した効率的な生産体制を整えています。計画的な造林と徹底した資源管理により、高い生産性と持続可能性を両立している点が大きな特徴です。
近年は労働安全の強化が最重要課題とされており、林業作業に伴う事故削減に向けた仕組みづくりが進んでいます。作業手順の標準化、安全教育の徹底、リスクアセスメントの導入などに加え、人が危険区域に立ち入らない作業体系への転換が図られています。
その中心となっているのが 高性能林業機械による機械化の推進です。10年ほど前、林業現場では労働災害による年間の死亡者が30名を超える深刻な状況であったとのこと。そうした危機的状況を受け、業界全体が強い危機感を共有し、安全性向上を最優先課題として認識した結果、人が危険区域に入らない仕組みづくりを目指して、伐採作業の自動化・機械化への取り組みが一気に加速し、現在の高い機械化率につながったそうです。現在では、伐倒、造材、集材、積み込みの多くが機械で行われ、オペレーターはキャビン内から安全に作業できる環境が整備されています。とくに造材作業ではハーベスタやプロセッサの導入が進み、危険な手作業を極力減らす方向で産業全体が動いています。
また、輸送インフラや港湾設備も整備され、丸太・製材品の輸出が国の経済を支える重要な柱になっています。再造林の義務化や国際認証(FSC等)の取得も進んでおり、環境配慮型の森林経営が制度面から支えられています。
2025年12月16日