2025年ニュージーランド林業視察研修報告 ~PAN PAC 編~

イベント・取り組みトピックス

2025年11月、海外の林業の取り組みから学び、今後の事業運営に活かすことを目的として、組合企画による初の海外林業視察研修を実施しました。

11月10日(月)視察先① PAN PAC FOREST PRODUCTS LTD(ネイピア)

視察1か所目、北島南部ネイピア、ホークス・ベイのフィリナキにあるPAN PAC FOREST PRODUCTS LTD(以下、PAN PAC社)へ到着、副社長の花山秀文氏、SANDALL氏から同社の概要や山林事業などのプレゼンテーションを受けました。その後伐採現場に移動し育苗や伐採、集材や林道など実際に現場をまわりながらご案内いただきました。

PAN PAC社の概要 ~北島を代表する林業企業~

PAN PAC社は、ホークス・ベイのフィリナキ(ネイピア近郊)を拠点とする林産・パルプ・製材メーカーで、林業事業から木材加工、パルプ生産までを一貫して手がけています。1971年の創業以来約50年間、地域林産業を支え、現在は日本の紙パルプ業界最大手の完全子会社として事業を展開しています。原料の多くに成長の早いラジアータ・パインを用い、年間約150万tの丸太、約53万㎥の製材、約27万tのパルプを生産・輸出しています。苗木の植栽から始まる持続可能な森林管理を徹底し、ホークス・ベイ地域最大の山林事業者として、従業員、請負業者それぞれ400人以上を擁しているそうです。自社森林(総面積3万7千ha)からは木材・パルプの約45%を供給し、伐採サイクルは約28~30年で、年間約1,000haを伐採・植え替えしています。

花山副社長(右)とSANDALLさん(左)からお話を伺いました
サイクロン・ガブリエルの被害

2023年2月、サイクロン・ガブリエルによりネイピア中心部を横切り港へと注ぐエクス川が堤防を決壊し、フィリナキの 同社の拠点は最大で約2m浸水しました。最も深刻な被害を受けたのは、製材所、チップ工場、パルプ工場、そして公益事業の電気システムです。また、多くの事務所、作業場、移動式プラント、製品にも損傷が発生しました。森林では道路インフラの崩壊や損傷も見られました。

被害発生後、同社は迅速に復旧作業に着手し復興プロジェクトを開始しました。製材事業は2024年1月に再開され、続いてパルプ事業も2024年3月に再稼働しています。

この災害を通じて、同社は従業員・協力会社とともに迅速な対応と復旧の体制を整える重要性を再確認し、また、再建の過程で安全対策や耐災害性も強化され、その後の事業運営におけるレジリエンス向上につながることになったそうです。

伐採現場の見学(ガバス山林)

近年の伐採現場ではワイヤーサポートによるテザーシステム伐採が導入され、伐採作業の安全性向上に大きく貢献しています。テザー伐採は急傾斜地で作業員が地上に立つことによるリスクを軽減する手法で、現在は35~45度の斜面でも活用され、全体の95%以上が機械伐採で行われています。

テザーシステムによる伐採作業
タワーヤーダ(グラップル搬器)作業

伐採計画は道路インフラの要件にも影響を与え、機械化の進展に伴い、道路上で作業する重機の数も増加しているそうです。
林道整備の際には環境への配慮が徹底されています。特に道路の下に設置するカルバート(導水管)は、魚が遡上できるように設計されており、カルバートを川底に近い位置に沈めて設置することで自然な水の流れを維持しています。また、周囲の小川では水生の生き物が多く確認でき、水質が非常に良好であることがうかがえます。こうした取り組みを通じて、地域の水生生態系を損なわない森林管理が実践されています。

カルバート(導水管)を通る小川はとても透き通っていました

また、安全教育にも力を入れていて従業員のみならずコントラクタ―(現場請負業者)に対しても研修や認定制度を導入し、安全水準の底上げを図る体制を整えているそうです。

左から 松木氏、現場監督のジョン氏、そして凄腕プロセッサーオペレーターのジャック氏
ラジアータ・パインの枝打ち作業と間伐

枝打ちは一般的に2段階で実施されるとのこと。
最初の枝打ちは、樹齢約5年の段階で行い、約3メートルまで枝を落とします。この段階では手作業で行われることが多いそうです。
その後、樹齢が進み、幹が十分に育った段階(今回の例では10年程度)で2回目の枝打ちを実施し、最終的に5.5m程度まで枝を除去していきます。この高さ設定は、将来の製材において節のない丸太を5メートル確保するためです。 間伐については、この林分では植栽本数800~1,000本のうち、成長が良く素性の良い約350本を残すよう選木し、それ以外を段階的に間伐していました。
最終的には、さらに良質な50本前後を主伐木として残す管理を行っているそうです。
また、枝打ち作業の管理やタイミングを最適化するために、ドローンによる樹高計測・成長状況の確認も行われているとのこと。ドローンで林分上空から撮影し、樹高や枝葉の分布を画像解析することで、どの樹木をいつ枝打ちすべきかを正確に判断できます。また、同じ区域内でも樹木の成長速度は場所によって異なるため、ドローンによる観測により、必要に応じて枝打ちのタイミングを調整することが可能になります。
この方法により、成長を阻害せずに高品質材を最大限確保することが可能となり、従来の地上目視のみの管理に比べて効率と精度が大幅に向上しているそうです。

間伐材の集材は、ハーベスタで伐採したのち、フォワーダで搬出します。路網は作業効率を確保するため、適切に作業道を切りながら施工しているとのことでした。

青空の下ランチをいただきました。足元は林道に敷くシュレッド
フォトギャラリー
ネイピア港
ラジアータ・パインの成長とスケールを体感
花山副社長とワイズさんを囲んで親睦を深めました
アールデコ建築が並ぶネイピアの街並み

2025年12月16日

2025年ニュージーランド林業視察研修報告 つづきは近日アップ予定です!