林業・木材講座9 マツつちくらげ病

 松くい虫被害と並んで松を集団的に枯らす被害に「マツつちくらげ病」がある。 この病気はその名前とともに、発生生態が一風変わっている。

 この被害は間伐作業場の焚き火跡、山火事被害地の周辺(写真1)、 公園やキャンプ場の炊事場など火を使った場所を中心に発生する。 松くい虫被害木を焼却した場所で発生することもある。 また、山火事被害地に植栽したアカマツが全滅した事例(写真2)もある。

 病原菌は、通常は枯葉や衰弱した根に付いて細々と生きており、発芽力が弱く発芽しないで死んでしまうものが多い。 ところが地温が高くなると発芽力が強くなり、更に高温で他のライバルの菌類が死滅すると、急激に繁殖し、健康な松を枯らす。
 この病原菌は、根から侵入して形成層(あま皮)を侵蝕し(写真3)根を殺すので、被害木は衰弱してついには枯れる。

 被害木の根元や近くの地表には子実体(きのこ)が発生するが、 その形が写真のように変な形をしている(写真4)ことから土水母(つちくらげ)と名づけられた。 新鮮な子実体はチョコレート色に白い縁取りがあるが、徐々に黒くなり、最期には乾燥してカサカサになる(写真5,6)

 被害は、最初焚き火跡等を中心に数本が枯れ、この範囲が1年に約4~5メートルずつ拡大する。 多くの場合、被害は3~5年位で自然に終息するが、直径10~20メートルの範囲の松が枯れる。

 防止対策は予防につきる。松林の中あるいは近くで焚き火をしないことである。 また、山火事跡地に松類を造林する場合には、付近に子実体が発生していないことを確認して実施する必要がある。


山火事隣接地に発生した被害
写真1 山火事隣接地に
発生した被害
山火事跡地に植えたアカマツの枯れ
写真2 山火事跡地に植えた
アカマツの枯れ
形成層の部分を侵蝕する
写真3 形成層(あま皮)の
部分を侵蝕する
地際部分に発生した子実体
写真4 地際部分に発生した
子実体(きのこ)
新鮮な子実体
写真5 新鮮な子実体はチョコ
レート色に白い縁取りがある
古い子実体
写真6 古くなると黒く
カサカサに乾燥する

(図・写真提供:佐藤平典氏 無断転載を禁じます)