林業・木材講座6 鉄砲虫(土場編) 幹に穴を開ける虫を一般に鉄砲虫と呼んでいるが、同じ鉄砲虫にも、立木につくもの、生きた木につくもの、 枯木か伐倒した木に寄生するものなど、など様々な種類がある。今回は、山土場や工場の貯木場の丸太につく種類について述べる。 積んである丸太から大量の鋸屑状の木屑が排出しているのが見受けられることがある(写真1)。 排出孔は丸太の奥深くまで続いており、直径1㎝にも達し、製材した製品は孔だらけで著しく価値が低下する(写真2)。 木を割ってみると、胴体の後ろを鉈で切ってしまったような変わった形の芋虫が出てくる(写真3)が、 これが孔を開けた犯人で、オオゾウムシの幼虫である。 この虫の成虫は体長3~4㎝程もあり、象のように長い鼻(本当は口吻)を持ち(写真4)、体は人の指ではつぶれないほど硬い。 被害は、特にアカマツに多いが、カラマツ、スギ、クリ、ナラなど多くの種類も被害を受ける。 湿り気のある場所に多発し、沢筋の土場、椪積の下部あるいは内部に多く発生する。 成虫が、樹皮の隙間に産卵することから、被害は皮付きの丸太にのみ発生し、皮むき丸太は被害を受けない。 丸太のほか、枯れ木、衰弱木にも寄生するが、地際近くに集中し、伐根に多量に寄生していることが多い(写真5). 成虫は、春から夏にかけて被害部から羽化・脱出するが、その跡には直径1㎝にも達する正円の孔が見られる(写真6)。羽化した成虫は夏の終わりまで順次産卵し、春の産卵では秋に成虫になり、夏に産卵されたものは翌年成虫になる。 被害防止法として、薬剤散布、樹皮を剥ぐ、椪積の下に空間を作るなどがあるが、特殊な丸太以外ではいずれも実施が困難である。 やはり、丸太を早期に製材することが基本である |
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![]() 写真1 排出された木屑 鋸屑状で盛り上がる |
![]() 写真2 材の内部の様子 この中を自由に移動する |
![]() 写真3 幼 虫 半分に切られたような形 |
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![]() 写真4 成虫(体長約3~4cm) 鼻(口吻)が象のように長い |
![]() 写真5 切り株への寄生 大量に排出された木屑 |
![]() 写真6 成虫の羽化・脱出孔 正円で直径1cmのもある |
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(図・写真提供:佐藤平典氏 無断転載を禁じます) |