林業・木材講座4 マイマイガ(類) 平成19年から20年の夏、岩手県北から葛巻、盛岡地域で、市街地の街灯や照明に蛾の大群が押し寄せた。 特にショッピングセンターやコンビニ、パチンコ店などでは、明かりの周りを乱舞し、地面に落ちた成虫の死骸に加えて、 壁や電柱に大量に生みつけられた卵塊に、パニック状態になった。 さらに、翌年の春には、卵から孵った小さい毛虫が壁を這いまわり、さらに風に乗って付近に散らばって、 洗濯物に付着したり、皮膚炎をおこすなどの被害が発生した。 盛岡市では、蛾の発生時期が「さんさ踊り」と重なることから、予防対策に追われた。 発生した蛾の種類は、マスコミなどではマイマイガと書かれているが、実はその近縁種であるカシワマイマイがかなり混じっており、 地域によってはむしろカシワマイマイの方が多かったようである。 マイマイガ、カシワマイマイ共に、ハンノキ、ナラ、カシワ、クリなど広葉樹の害虫として知られていた。 このうちマイマイガは戦後カラマツの造林が行われるようになってからはカラマツの害虫として有名になってしまった。 岩手県内では、昭和30年頃から50年にかけて、旧衣川村や岩手町でほぼ10年間隔で大規模に発生した記録があるが、今回は久しぶりの発生である。 被害は、葉が食べられて全山黄褐色になるが、多くの場合幼虫に発生する流行病によって大発生の翌年には消滅し、同じ林で3年連続することはない。 この被害でカラマツが枯れることはなく、成長量は一時減少するが2、3年で完全に回復する。 今や、マイマイガは、林業害虫と言うよりは、住宅地への飛来による不快、あるいは孵化幼虫による湿疹など衛生害虫として重要になったと言える。 カシワマイマイは、広葉樹のみを食べ、カラマツは食害しない。過去に岩手県内の大発生の記録はない。 |
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![]() 写真1 成虫♂ 羽の長さ2.5cm位 |
![]() 写真2 成虫♀ 羽の長さ3.0cm位 |
![]() 写真6 丸坊主になったカラマツ林(8月) 秋までにはかなりの葉が再生し、枯れない |
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![]() 写真3 卵 塊 この状態で越冬する |
![]() 写真4 孵化幼虫 風に乗って分散する |
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![]() 写真7 病気で死んだ幼虫(1) |
![]() 写真8 病気で死んだ幼虫(2) |
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![]() 写真5 幼 虫 100種類以上の葉を食べる |
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(図・写真提供:佐藤平典氏 無断転載を禁じます) |