林業・木材講座2 飛び腐れ

 前号の「はちかみ」同様スギやヒノキアスナロの幹の内部が変色・腐朽する被害(写真1)である。こちらもカミキリムシの仲間のスギノアカネトラカミキリ(写真2)の食害によって生ずる。
 このカミキリは、枯枝に産卵し,孵化した幼虫が枯枝の内部を伝って幹の中に侵入する。幼虫は幹の内部を食害して成長し、又枯枝に戻って蛹化・羽化し、その基部に穴を開けて脱出する(図1)。一生を通じて樹木の死んだ部分だけで活動する。

 生きた部分に触れることがなく、樹木の健康には全く関与しないので、被害木は弱ることもなくその後も正常に生長を続ける。被害による変色や腐朽は、必ず枯枝を中心に発生(写真3)し、幹の内部に巻き込まれた後も拡大し空洞化する場合もある(写真4)
 この被害は、樹木に対する被害というよりは、幹を利用する人間にとって極めて厄介な被害といえよう。

 立木で被害の有無を判定する場合、被害初期であれば、次の方法で見分けることができる。

   1 枯枝が多数ついていないか。(写真5)
   2 枯枝の基部に孔がないか。(写真6)
   3 枝の切り口にある穴に細かい粉が詰まっていないか。(写真7)

 しかし、樹木の生長に伴って、被害に関与した枯枝が幹の中に巻き込まれてしまえば、外部から被害の有無を判断することはできない。外見上健全木と見なされた木を伐採・製材して初めて被害の存在を知ることも多い。
 被害は、枯枝を介して発生することから、枝打ちが適正になされている林には発生しない。
被害模式図
図1 被害模式図(スギ・ヒノキ   の穿孔性害虫(1986)から






(図・写真提供:佐藤平典氏
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被害材の製品
写真1 被害材の製品
成虫
写真2 成虫(体長約1cm)
枯れ枝の基部の穴
写真6 枯枝の基部の穴
     (径2mm位)
空洞化した被害部
写真4 空洞化した被害部
被害部の縦断面
写真3 被害部の縦断
     面
枯れ枝が多いスギ
写真5 枯枝が多いスギ
枯れ枝の断面の穴に粉が詰まる
写真7 枯枝の断面の穴に
     粉が詰まる