林業・木材講座16 雹の害

 雹による被害は、タバコやキャベツの葉に孔があく、クワの葉がちぎれて落ちる、リンゴが傷だらけになるなどが知られている。
 樹木では、5月頃の雹によって今年伸びた新芽が折れる被害が時々発生するが、木が枯れてしまう例は見たことがなかった。
 最近、岩手県沿岸部でアカマツ林に雹によると思われる被害が発生した。 今回は、被害の状況と症状についてお知らせする。

 被害林は、樹冠の針葉が異常に少なくなっており、よく見ると葉をつけている小枝がほとんど無かった(写真1)。 中には、樹皮が剥げ落ちて既に枯死しているものもあった(写真2)
 同じ林に生育する広葉樹の幹にも傷跡があり、傷は北向き面に集中的に発生していた(写真6~8)。 枝には多数の同様の傷が上面のみに見られた(写真9~12)

 アカマツを切り倒してみたところ、幹の上部で広葉樹と同様北向き面に傷跡があり(写真4)、枝では上部に集中して樹皮が剥げる傷が見受けられた(写真5)。 樹冠部を見ると、同じマツでも南側に比較して北側の針葉が少なかった(写真3)。 梢端部の小枝のほとんどが折れていた。

 現地の方の話では、去年の秋に北からの強風を伴って雹が降り、その後からこの林の様子がおかしくなったということであった。 また、雹によって自動車のボンネットが凹み修理をしたとのことであった。

 以上のことを総合して、このアカマツ林の異常は雹による被害と判断した。 また、針葉の減少は、梢端部が雹による傷の部分で折れて脱落したためと推定された。

アカマツ被害林
写真1 アカマツ被害林
アカマツ枯死木
写真2 アカマツ枯死木
北側の針葉少ない
写真3 北側の針葉少ない
アカマツ幹上部
写真4 アカマツ幹上部
  
アカマツ細枝
写真5 アカマツ細枝
コシアブラの幹
写真6 コシアブラの幹
ウリハダカエデの幹
写真7 ウリハダカエデの幹
コナラの幹
写真8 コナラの幹
  
サクラ類の枝
写真9 サクラ類の枝
コナラの枝
写真11 コナラの枝
ウリハダカエデの枝
写真10 ウリハダカエデの枝
エンジュの枝
写真12 エンジュの枝

(図・写真提供:佐藤平典氏 無断転載を禁じます)