林業・木材講座15 鉄砲虫(立木編)

 鉄砲虫については、本講座6で山土場や貯木場などで丸太につくオオゾウムシを紹介した。 また、マツにつくマツノマダラカミキリを本講座3、スギにつくカミキリ類については本講座11で紹介した。 今回は広葉樹の生立木につく種類について説明する。

 ① ゴマダラカミキリ
 多くの種類の広葉樹を加害するが、岩手県内では庭木や街路樹として植栽されているシラカンバへの被害が目立つ。 地際部の幹内部を食い荒らし、成虫が脱出した後には直径1cmの丸い孔ができる。集中的な被害により、根元から倒伏する場合もある。

 ② シロスジカミキリ
 多くの種類の樹木を加害するが、最近では造林されたナラ類の被害が見られる。 被害木は幹に異常な膨らみが見られ樹皮も荒れており、根元に細い木屑が貯まっている。

 ③ コウモリガ
 スギ、ハンノキ類、ポプラ類からトマトやトウモロコシなどの農作物まで極めて多くの植物を加害する。 全く健全な状態の植物に寄生し、樹木では幹の中心部に潜んで幹を一周するように甘皮(形成層)部を食害する。 被害木は衰弱し、やがて被害部で折れてしまう。

 共通して、被害は本来の自然環境と異なる環境に植えられた広葉樹に発生することである。 以前早生樹として造林が奨励された改良ポプラ、コバハンノキ(タニガワハンノキ)に多発した経緯がある。 また、公園や街路に植えられているシラカンバ(中国では大きな問題になっている)や外国産のカエデ類の被害が目立つ。
 最近進められている広葉樹造林地での被害が報じられている。針広混交林の造成には、従来から生育している樹木の活用が望まれる。
  
ゴマダラカミキリの成虫
写真1 ゴマダラカミキリの成虫
ゴマダラカミキリ成虫の脱出した孔
写真2 ゴマダラカミキリ成虫の脱出した孔
ゴマダラカミキリの被害で折れた木
写真3 ゴマダラカミキリの被害で折れた木
シロスジカミキリの成虫
写真4 シロスジカミキリの成虫
  
シロスジカミキリによる被害木
写真5 シロスジカミキリによる被害木
コウモリガの成虫
写真6 コウモリガの成虫
コウモリガの幼虫
写真7 コウモリガの幼虫

(図・写真提供:佐藤平典氏 無断転載を禁じます)